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カナダでのリタイアメント: RRSP: 拠出

(情報更新、加筆/修正、体裁修正等を含む)

RRSP への拠出

自分の拠出限度額も理解できたところで、実際の拠出額あるいは拠出のサイクル等について考えてみましょう。

RRSPの様な積み立て型の貯蓄では、毎給与から自動的に天引きする、あるいはスケジュールを決めて自動的に振込みを行うなどの方法で、家計のやりくりに組み込んでしまうのが最も有効な方法です。家計に影響のない範囲で、出来る限りの拠出をすることが理想です。もちろん、家計が許すのであれば、年間拠出限度額いっぱいまでの拠出が出来ることが理想です。

前述の通り、RRSPのメリットのひとつは、タックスファイリング時にその拠出額をそのまま控除として利用できるという点です。この点を鑑みると、長期的に見ても短期的に見ても、できる限り毎年拠出限度額いっぱいまでの拠出を目指すということは、非常にメリットの大きい努力目標であると言えます。RRSPの制度もまた、拠出限度額いっぱいまでの拠出を促すような形で、各種期限日等が設定されているといっても過言ではありません。
暗に、
1. 年間を通じて一定額を拠出し続ける
その上で、タックスファイリング直前の時点で、
2. 拠出限度額に満たない分を追加で拠出をする
という方法を取れるように期日が設定されています。これらの点を踏まえ、RRSPの拠出のサイクル/スケジュールに関して考察してみましょう。



RRSPでは、「年間」拠出額と謳っていながら、実際の一年のサイクルはいわゆるカレンダーイヤー (1月~12月) とはなりません。該当年に対する拠出期間は、3月初めから翌年2月末までの一年となります。
*実際は、当該年の2月最終週の曜日の構成によって数日ほど伸ばされることがあります。大まかに、毎年2月最終日が拠出締切り日であると覚えておけば問題ありません。

例 (直近3カ年):
2021年分のRRSPの拠出期間: 2021年3月2日~2022年3月1日
2022年分のRRSPの拠出期間: 2022年3月2日~2023年3月1日
2023年分のRRSPの拠出期間: 2023年3月2日~2024年2月29日
これは、4月末日に設定されているタックスファイリングの締め切り日との兼ね合い等を踏まえ、理にかなっているスケジュール設定であると言えます。
例に沿って考察してみましょう。
  1. 年間所得額が$73,000程のAさん。2022年分のタックスファイリングを早めに終え、2023年3月半ばに届いた「Notice of Assessment」によると、2023年分のRRSP拠出限度額は「$13,000」となりました。

    RRSP(2023年)年間拠出限度額 = $13,000

  2. グループRRSPを提供しているAさんの勤務先では、月二度(毎15日と月末日、年合計24回)給与が振り込まれる形態です。Aさんは毎給料日に、$350をRRSPに拠出するように設定しています。

    2023年3月2日から2024年2月29日までの自身の拠出額 = $350 x 24 = $8,400

  3. Aさんの勤務先のグループRRSPでは、年収の5%を自動的にMatchしてくれるというベネフィットがあり、毎給与に分けてその額がRRSPに拠出されるようになっています。

    2023年3月2日から2024年2月29日までの雇用先からの拠出額
    = ($73,000 x 5%) / 24 x 24 = $3,650
したがって、Aさんのこの時点での2023年分の拠出合計額は、
$8,400 + $3,650 = $12,050

となり、拠出限度額に達するまであと
$13,000 - $12,050 = $950

が余っているということがわかります。

さて、上記のような拠出を行っている設定で、2024年2月頃 (2023年分の) タックスシーズンを迎えるとしましょう。

2023年分の所得税計算にあたり、課税対象所得額を少なく抑えるためにRRSPによる控除を最大限に利用しようとするAさんは、上記の計算により、拠出限度額にまだ$950の空きがあることを知っています。
そこでAさんは、毎給料日からの拠出とは別に、$950を Saving Account から工面しRRSPへ追加拠出することにしました。

合計拠出額 = $8,400 + $3,650 + $950 = $13,000
考察
Aさんが Saving Account から捻出してでも追加拠出をしようと決めたのには当然理由があります。利用しているタックスファイリングのソフトウェアによる計算によると、$950の追加拠出をすると、その結果タックスリターン額が$2,500から$3,200 (あくまで例) にまで増えることがわかりました。その金額差を鑑み、Saving Account を切り崩してでも追加拠出をする価値があると判断したわけです。Aさんは、リターン額が振り込まれた際には、その中から$950を Saving Account に戻しておくつもりでいます。
また、当然ですがこの$950の追加拠出分は「支出」されたわけではありません。RRSPに拠出されたわけですから、あくまで自分のお金です。
つまりこの例では、結果的に一時的に$950を移動させただけで、$700もの単純な利益が生まれているということが言えるのです。

注意点

タックスファイリングの期限が4月末日であるのに対し、RRSPの拠出期限は上記の通り2月末(または3月初平日)です。したがって上記の様なシナリオを踏襲する場合には、タックス計算の作業を出来るだけ早く開始し、追加拠出の金額を割り出した上でRRSPの拠出期限の前までに追加拠出を完了させる必要があります。

まとめ

上記の例で示した$700という差益は、決して極端な例ではありません。RRSPへの拠出による控除というのは、リターン額に最も大きな影響を与えるファクターのひとつです。したがって、予算が許す限り多くの、また拠出限度額に出来るだけ近い拠出を達成することは、短期長期両方の視点からも、大変メリットのあるやりくりであると言えるのです。